こんにちは!
この写真の方、
ハインツ・ホリガーというオーボエ奏者、ご存知の方も多いと思います。
ホリガーというと、明るくて軽やかな音色が、思い浮かびますよね。
私は、中学3年生の時にオーボエを始めました。
始めた当初、母にねだって買ってもらった、初めてのオーボエのCDは、
ハインツ・ホリガーの『ベニスの愛 イタリア・バロック・オーボエ協奏曲集』
でした。
ねだって買ってもらった、と言っても、
中学3年生の私が、ハインツ・ホリガーを知っていて、
このCDがどうしても欲しい!と選んだわけではありません。
私の故郷、長崎県長崎市の小さなCDショップのクラシックコーナーに、
オーボエのCDは、たったの2枚しかありませんでした。
そのうちの一枚が、ホリガーの『ベニスの愛』だったのです。
このCDを聴いて、私はますますオーボエに魅了されました。
毎日毎日、、繰り返し聴いたあと、
次の一枚が欲しくなって、
そのお店の、前回買わなかった、もう一枚を買ってもらいました。
私が買った2枚目のオーボエのCDは、
ハンス・イェルク・シェレンベルガーの、『超絶のコロラトゥーラ・オーボエ』
でした。
家に帰って、早速CDをかけてみて、おや、と思いました。
「しまった、間違えて、サックスのCD買っちゃった?」
毎日のようにホリガーのCDを聴いていた私には、
シェレンベルガーの音は、まるでサックスのように分厚く聴こえたのです。
吹き手によって、こんなにも、音色が違うの??
当時の私は、大いに驚きました。
同じオーボエとは、とても思えない。。
大学の時に習っていた、オーボエの先生が、おっしゃっていました。
「ホリガーは、真ん中の c(ド)の音に、響きを統一したんだ」
意味、わかりますか?
これはなかなか、勇気のいることだと、私は思うのですが・・
オーボエの、真ん中のc(ド)の音は、オーボエの音の中で、
一番、開放的で明るい音色がします。
チャルメラっぽい、というと、わかりやすいでしょうか。
普通は、このcの音を、なるべくきれいに出そう、
他の音の響きに寄せようとします。
ですがホリガーは、他の音を、cの響きに寄せたのだそうです。
もう一枚のCDの、シェレンベルガーは、そのCDが録音された1865年当時、
ベルリンフィルの首席オーボエ奏者だった人です。
指揮者カラヤンの時代ですね。
北ドイツのオーケストラのオーボエは、重厚で、暗い音色が好まれていました。
その中でも世界を代表するオーケストラ、ベルリンフィルの首席オーボエです。
どちらも、世界的なオーボエの名手ですが、
二人の音色は対照的だったんですね。
ところで、最初は音色の違いに驚きましたが、
どちらのCDも、一度演奏を聴き始めると、すぐにその音楽に惹きつけられてしまいます。
特に、ホリガーの場合は、
オーケストラのオーボエソロの音色などと比べると、一瞬、あれ?薄いな、と感じます。
でも、演奏を聴いていると、すぐにそんなことは忘れてしまうのです。
ホリガーの演奏を聴いていると、
ああ、彼にとってオーボエは、音楽を表現するために、
たまたまそこにあった楽器なんだなと、感じます。
オーボエの音色というのは、ただ一音吹いただけで、人を魅了することができると思います。
さらに、リードを自分で作ることができるので、
オーボエ吹きは、音色にばかり意識が行きがちです。
実は私も、その一人です。
これまでの記事で、表現することの重要性について、何度も触れて来ましたが、
これは、半分は、自分がそのことを忘れないために、書いています。
先ほど、ホリガーは、cに響きを統一させた、というお話をしました。
響きを統一する、ということは、表現する上で、とても重要です。
フレーズを吹くのに、一音一音の響きがバラバラだったら、
どんなに頑張ってレガートで吹いても、レガートには聴こえないからです。
その中の一音がどんなに美しい響きでも、その音と関わり合う前後の響きと統一していなければ、
そのフレーズは美しくならないですよね。
是非、色々なプロのオーボエ奏者の演奏を聴いてみてください。
音色にはそれぞれ個性があると思いますが、
響きが統一されている、という点では、共通しているはずです。
私がドイツに留学して、レッスンではじめに徹底的に指導されたのは、
響きを統一させること、
タンギングして音階を吹くときなどは、均一に、音の粒を揃えること、でした。
曲の練習はそこそこに、とにかく基礎練ばかりをしていました。
ちなみに私は、真ん中のb(シ♭)を基準に、響きを揃えるよう
指導を受け、練習しました。
この辺りの、基礎練の仕方などについても、
今後、記事にしていきたいなと思います。
夏休みに入って、子どもたちに付き合う時間が増えたので、
記事の更新ペースが落ちてしまっているのですが、
引き続き頑張って書いていきますので、
是非これからも、覗いていただけたら、嬉しいです。
それでは・・