こんにちは!
昨日に引き続き、バッハの『クリスマス・オラトリオ』です。
せっかく話題に出したので、今日は簡単ですが、
『クリスマス・オラトリオ』について、
ちょっぴりオーボエ吹き目線も交えながら、ご紹介したいと思います。
曲紹介:バッハの『クリスマス・オラトリオ』
バッハは、三つのオラトリオ(『クリスマス・オラトリオ』BWV248、『復活祭オラトリオ』BWV249、『昇天祭オラトリオ』BWV11)を残しました。
その中で、『クリスマス・オラトリオ』は最も規模が大きく、彼の代表作の一つとなっています。
オラトリオ(劇音楽)と名付けられていますが、
実際は、六つの教会カンタータを一組にまとめたもので、聖書の物語としての連続性も持っておらず、
本場イタリアのオラトリオとは、あまり似ていないものとなります。
ですが、バッハ自身はこの曲に「オラトリオ」という表記を意図的に使用しており、
オラトリオの全体構造と六つのカンタータのそれぞれが、全て互いに関連性を持つように作曲されています。
物語の連続性がない代わりに、マタイとルカの福音書から、キリスト降誕祭に関わる物語を抜き出し、
守備一貫した叙情詩的な描写でまとめ上げています。
つまり、客観的にみてこの作品は、同じテーマで結び付けられた六つのカンタータの集合であると言えます。
作曲されたのは、バッハが49歳となった1734年です。
当時バッハが住んでいたライプツィヒ(彼は、少年時代から、ドイツの各地を転々としますが、
38歳から、65歳で亡くなるまでの27年間をライプツィヒで過ごしました)の教会で、初演されました。
初演では、1734年のクリスマスの日から、翌年の1月6日にかけて、
1日1部のペースで6日に分けて演奏されました。
物語は、テノールの福音史家の語りで進み、
各声部(ソプラノ、アルト、テノール、バス)のソリストによるアリアや合唱、
コラールなどで構成されています。
第1カンタータ「いざ祝え、この良き日を」(第1曲〜第9曲)
ヨセフの旅立ちから、マリアが御子を産むところまでが語られます。
このオラトリオの中で最も有名な部分で、
クリスマスらしい華やかな明るさで、一般に親しまれています。
第4曲のアルトのアリア「心の準備をしなさい、シオンよ」では、
オーボエ・ダモーレの助奏を伴うアルトの独唱が、救世主の到来に心をそなえよ、と呼びかけます。
ダモーレの助奏、素敵なんだけど、
ダ・カーポ形式で長くて、なかなかにしんどいです。。
(吹くのがね)
第1カンタータの中心に置かれているのは、
第5曲のコラール「どうあなたをお迎えしたらよいのでしょう」で、
キリストを受け入れる準備と期待のテーマが示されています。
*バッハはこのコラールに、『マタイ受難曲』のコラール「おお 血にまみれ傷ついた御頭よ」の旋律を引用することにより、ここが受難の出来事と関連づけられており、それ無しには生誕祭の喜びは理解できないことを示唆しています。なぜなら、神の子が自らの犠牲死を通して人間たちの罪を請け負う瞬間に、人間と神との約束の和解が遂行されるからです。(カタリーナ・ローゼンクランツ『期待と実現 J.S.バッハの<クリスマス・オラトリオ>)
第2カンタータ「この地に野宿して」(第10曲〜第23曲)
羊飼いたちの前に天使が現れ、救世主の誕生を告げる場面が描かれます。
シチリアーナ風の牧歌的な主題で始まる序奏は、
一般にパストラル・シンフォニーの名で知られています。
第19曲のアリア「ねむれ、いとし子よ」は、アルトの独唱による子守唄で、
このオラトリオの中でもっとも有名なアリアの一つです。
オーボエ・ダモーレも活躍します。
第3カンタータ「天の統治者よ、この歌声をきけ」(第24曲〜第35曲)
三日にわたって語られるイエス・キリスト誕生の物語の最後の部分にあたります。
羊飼いたちがベツレヘムに行って、飼葉桶のなかに寝かされた御子を見つけ、
神を讃えながら家に帰っていくところまでが語られます。
冒頭、第24曲の合唱「天の統治者よ、この歌声をきけ」は、
トランペットとティンパニの華やかな音色を生かした序奏に始まる、喜びの合唱です。
第29曲の二重唱「主よ、憐れみをもて」は、ソプラノとバスの二重唱で、
2本のオーボエ・ダモーレが助奏します。
2本のオーボエ・ダモーレの重なり合う旋律と、愛らしい音色が素敵です。
第31曲のアリア「我が心よ、この聖なる奇跡を」は、
ヴァイオリンソロの助奏を伴うアルトの独唱で、
御子降誕の奇跡を歌う、美しいアリアです。
第4カンタータ「感動と賛美にひれ伏さん」(第36曲〜第42曲)
御子は生後8日目に、イエス・キリストと名付けられたとされています。
それはちょうど1月1日にあたり、この日をイエスの御名の祝日として祝います。
第4カンタータは、この祝日のために書かれたもので、
初演は1935年の1月1日に行われました。
第36曲、救世主の到来を祝って歌う、感謝の合唱「感謝と賛美にひれ伏さん」で始まります。
管弦楽編成にホルンが加わっており、
第4カンタータにそれまでとは異なる色彩を与えています。
オーボエの旋律で始まる第39曲、ハ長調のソプラノのアリア「わが救い主よ、御名を歌え」では、
8分の6拍子のリズムにのって安らぎに満ちた主題が歌われます。
この曲は、ソプラノや、器楽によるエコーの効果がとても印象的です。
第41曲、ニ短調のテノールのアリア「われ主のためにのみ生きん」は、テノールの独唱です。
2本のヴァイオリンとチェロによる伴奏がエネルギッシュで惹きつけられます。
弦楽器もかっこいいよなあ!
第5カンタータ「神にみ栄えあれ」(第43曲〜第53曲)
第5、6カンタータは、救世主の誕生を知って東方から訪ねてきた博士たちの物語です。
その物語の前半にあたる第5カンタータは、
博士たちがヘロデ王を訪ねて御子のありかを問う場面が語られます。
第5カンタータは、生誕を祝う6日間の礼拝周期の中で、
唯一の日曜日であり祝祭日ではない日にあたることから、
バッハはこの第5カンタータを管弦楽法的に最も節約されたものにしました。
すなわち、トランペット、ティンパニ、ホルン、フルートは使用せず、
弦楽器群と2本のオーボエ・ダモーレという編成に絞ったのです。
第43曲、合唱「神にみ栄えあれ」は栄えあれ」は華麗な4分の3拍子の曲で、
2本のオーボエ・ダモーレが活躍します。
第47曲、アリア「照らし給え、わが暗き心を」は、
オーボエ・ダモーレ(ソロ)を伴ったバスの独唱です。
嬰ヘ短調のしっとりと哀愁の漂う旋律で、
バスの歌声と、オーボエ・ダモーレの音色が切なく美しく響きます。
短調でのダモーレの響き、なんとも言えないなあ・・
第6カンタータ「主よ、おごれる敵の迫り来る時」(第54曲〜第64曲)
第6カンタータの初演は、1735年1月6日の顕現節に行われました。
顕現節とは、
東方の博士たちがうまやに憩う御子を探しあて、その誕生を祝ったという出来事を記念する祝日です。
救世主降誕の物語を締めくくるのにふさわしいエピソードでもって、
2週間にわたって演奏されたクリスマス・オラトリオも、終わりを迎えます。
曲の終盤に近づいた第61曲は、2本のオーボエ・ダモーレの助奏を伴う、
劇的なテノールのレスタティーヴォ「まことににわが貴き人はここを去らず」。
引き続く第62曲、アリア「おごれる敵は恐れおののき」では、
レスタティーヴォに続き、激しいテノールのアリアを2本のオーボエ・ダモーレが助奏し、
ドラマティックな曲想となっています。
このダモーレの二重奏は、
ドキドキしちゃうよー!
最終曲の第64曲、コラール「今やすべては報われて」は、
器楽全体による華やかな前奏と伴奏を伴った、コラール合唱です。
第1カンタータの第5曲でも使われた旋律「おお 血にまみれ傷ついた御頭よ」を、
楽節ごとに区切って力強く歌い、オラトリオ全曲を閉じます。
な、長くなっちゃった。
最後まで読んでくれたあなた、
どうもありがとうございます。
全体を通して、オーボエ陣は大活躍だし、
そのほかの楽器のソロも素敵だよね。
もちろん、ソリストのアリアや、合唱コラールなどもね!
ぜひ、聴いてみてください!
それでは・・